
花粉媒介動物の危機と庭園による解決策

今、世界中でミツバチやチョウなどの花粉媒介動物(ポリネーター)が驚くべき速さで減少しています。農薬使用、生息地の喪失、気候変動など、多岐にわたる要因が彼らの生存を脅かしており、これは日本の生態系も例外ではありません。
この危機は、単に自然愛好家の問題に留まりません。世界の食料生産の約75%が彼らの媒介に依存しており、私たちの食卓にも直接影響します。 しかし、絶望する必要はありません。個人の庭園や企業の敷地が、この問題に対する強力な解決策となる可能性を秘めているのです。
岩船草曲園では、科学的知見に基づき、各地域に特化したポリネーター支援庭園を設計することで、生物多様性の保護と食料安全保障への貢献を目指します。あなたの庭が、次の世代のための「小さな希望の森」となるのです。
ポリネーター誘引の5つの設計原則
多様な開花期
春から秋まで、常に花が咲き、蜜源と花粉を供給できる植物を組み合わせます。連続的な食料供給が重要です。
花形の多様性
管状花、平板花、集合花など、様々な形の植物を選び、多様なポリネーター種に対応します。
在来植物重視
地域のポリネーターは、在来植物との共進化関係にあります。地域の気候と土壌に適した原生植物を優先します。
農薬フリー
殺虫剤や除草剤を一切使用せず、有機栽培と天敵を利用した天然防除で、安全な環境を確保します。
営巣環境
ミツバチ用の巣箱、枯れ木、石積み、土手など、ポリネーターが安全に営巣・越冬できる場所を提供します。
水場確保
浅い水皿や湿った土壌、鳥のさえずりの聞こえる水飲み場など、訪れる生き物に必要な水分を確保する方法。
年間開花カレンダー・ポリネーター活動期

ポリネーターガーデンでは、一年を通して花粉媒介動物が活動できるよう、計画的な植栽が不可欠です。以下に、主要な季節ごとの開花スケジュールと、その時期に活躍するポリネーターの種類をご紹介します。
植物: ウメ、サクラ、菜の花、レンゲソウ、チューリップ、アブラナ科植物
ポリネーター: ニホンミツバチ、セイヨウミツバチ、マルハナバチ、一部の初期チョウ類 (ギフチョウ、モンシロチョウ)
ポイント: 冬を越したポリネーターが活動を始める重要な時期。早期の蜜源提供が彼らの生存に不可欠です。
植物: バラ、アジサイ、ラベンダー、セージ、コスモス、ヒマワリ、ハーブ類
ポリネーター: 各種ミツバチ、アゲハチョウ、タテハチョウ、シジミチョウ、ハナムグリ、ハナアブ
ポイント: 庭が最も活気づく時期。多様な花形と色の植物を配置し、多くのポリネーターを呼び込みます。
植物: キキョウ、フジバカマ、アスター、リンドウ、ススキ、様々な野生花
ポリネーター: 秋型のチョウ類、マルハナバチ、ハナバエ、ガ
ポイント: 夏の暑さに負けない強健な植物を選び、活動期の後半も蜜源を途切らせないことが重要です。
植物: キク科植物 (ツワブキ、リュウノウギク)、イヌタデ、ツルウメモドキ、シュウメイギク
ポリネーター: 越冬前のミツバチ、一部のチョウ類 (ルリタテハ、アカタテハ)、ガ
ポイント: 越冬に備えるポリネーターのための最後の蜜源。特にニホンミツバチの越冬には不可欠です。
京都地域のポリネーター図鑑
京都地域に生息する主要な花粉媒介動物とその特徴をご紹介します。彼らを知ることが、効果的な庭づくり第一歩です。

ミツバチ類 (ニホンミツバチ・セイヨウミツバチ)
最も知られたポリネーター。社会性で集団で活動し、広範囲の花の受粉に貢献します。ニホンミツバチは在来種で、セイヨウミツバチよりも様々な在来植物に訪花します。
活動時期: 春~秋 / 好む花: 単純な形の花、集散花序

チョウ類 (アゲハ・シジミ・セセリなど)
美しい姿で庭を彩る重要なポリネーター。幼虫の食草と成虫の蜜源植物の両方を考慮した植栽が彼らの生息を助けます。
活動時期: 春~秋 / 好む花: 筒状花、鮮やかな色の花

甲虫類 (ハナムグリ・カミキリムシなど)
意外と知られていませんが、多くの甲虫類も重要な花粉媒介者です。特にハナムグリは花粉を食べるため、受粉に貢献します。
活動時期: 春~夏 / 好む花: 大きく開いた花、白い花

その他 (ハナアブ・ガ類・マルハナバチなど)
ミツバチやチョウ以外にも、ハナアブやガ、様々な種類の単独性ハナバチ、マルハナバチなどが花粉媒介に貢献しています。
活動時期: 通年 / 好む花: 様々
営巣・越冬環境の創造技術
ポリネーターが健全に活動するためには、蜜源となる植物だけでなく、安全な住処が必要です。岩船草曲園では、以下の技術を用いて持続可能な環境を創造します。
巣箱設置
ミツバチやマルハナバチ、単独性ハナバチのために、種類に応じた巣箱を設計・配置します。特に、竹筒や木のブロックを利用したハナバチホテルは有効です。

自然営巣地創造
枯れ木や石積み、土手、腐葉土の堆積など、自然素材を活用してポリネーターが営巣・越冬できる場所を意図的に設けます。

越冬場所の確保
落ち葉をそのままにするエリア、草を残す場所、老木や樹洞の活用など、冬を越すポリネーターのための隠れ場所を提供します。

ポリネーター調査・市民科学への参加
単に庭を造るだけでなく、私たちが設計する庭がどれだけ生態系に貢献しているかを定量的に評価し、継続的な改善を図ります。お客様にもこのプロセスに参加していただくことで、環境保全への意識を高めることができます。
- ✓定期的な種数・個体数カウントと記録
- ✓iNaturalistアプリなどを活用した観察データ共有
- ✓地域ネットワークでの情報交換と連携
- ✓年次レポートによる保全効果の評価と改善提案
これらの活動を通じて、お客様の庭が地域の生態系ネットワークの一部となり、より広範な生物多様性保全に貢献していることを実感していただけます。

ポリネーターガーデン設計・施工サービス
岩船草曲園では、お客様のニーズと庭の環境に合わせた最適なポリネーターガーデンの設計から施工、メンテナンスサポートまで一貫して承ります。生態系と調和した、未来に向けた美しい庭を一緒に創造しませんか。
専門コンサルティング
現地生態調査から始め、既存のポリネーター種や潜在的な生息環境を詳細に分析します。お客様のビジョンと当社の専門知識を融合させ、最適な計画を立案します。

オーダーメイド設計・施工
「多様な開花期」「在来植物重視」など、ポリネーター誘引の原則に基づき、植物選定、配置計画、営巣環境、水場設置まで、細部にわたる設計を行います。熟練の職人による丁寧な施工で、計画を具現化します。

生態系改善モニタリング
施工後も定期的なモニタリングを実施し、ポリネーターの活動状況や植物の生育状態を評価します。必要に応じて、維持管理の方法や更なる改善策をご提案し、長期的な環境価値を向上させます。
